中医学では病気や症状によって、薬だけでなく、飲食物の種類や摂取の仕方を変えることがあります。また、季節や地域の移り変わりによっても変えることがあります。
例えば、気温が高い地域に住んでいる場合、身体に熱が過度に籠らないように、スイカ・瓜・トマト・なし・メロン・もずく・きゅうり・緑豆・そば・はとむぎ・緑茶・豆腐など「寒性の食べ物」を摂取して、余分な熱を冷ましたり利尿を促したりして、体温が正常の状態に近づくように調整します。
反対に、気温の低い地域に住んでおられる場合には、牛肉・羊肉・しょうが・ねぎ・ニラ・かぼちゃ・餅などのいわゆる「熱性の食べ物」を多く摂取することで、身体を温めて正常な状態を保てるような工夫をします。
日本人は食べ物の属性をあまり気にしませんが、現在食べているものが約6ヶ月後の身体の血や肉になるという因果を知って、もう少し食事の内容に気を配る必要があります。一卵性双生児の場合でも、同じミルクで育てている間は二人の顔かたちはそれほど違いはありませんが、離乳食になって好みが違ってくると、半年もすれば顔や体つき、性格まで変化してくるそうです。
余談ですが、中華料理とフランス料理は世界中で賛美されておりますが、中国の人によると一つだけ大きな違いがあるそうです。「中国人はいくら美味しくても、身体に良くない料理は食べない」、「フランス人は美味しかったら、多少身体に悪くても食べる」という話なんですが、フランスの人に聞いてみたら“ノン”と首をすくめて笑っていました。
また、中医学では薬と食べ物の区別をどう捉えているのかと云いますと、「薬とは、薬理作用が強いもの・副作用のあるもの・味のよくないもの」、「食べ物とは、薬理作用があっても穏やかで弱いもの・副作用のないもの・味がわるくないもの」と考えればよいという話を三十年程前に中国最高峰の北京中医医院の教授からお聞きした記憶がありますが、現在も同じなんでしょうか。